人類が金を活用し始めたのは紀元前6世紀にまでさかのぼるといいます。
その後、エジプト文明においては金は神格化され、近代には通貨としてその役割を果たすようになります。
金は銅や鉄と共に、人類に大きな影響を与えてきた鉱物といえます。
このように、金は昔から珍重されてきた希少な金属ですが、意外にも身の回りにあふれている金属でもあります。



金の元素記号はAu。これはラテン語で金を意味するaurumに由来します。
柔らかく、可鍛性があり、重く、光沢のある黄色、つまり金色をしており、展性と延性に富み、非常に薄くのばすことができます。
1gあれば数平方メートルまでのばすことができ、長さでは3000mまで伸ばすことができます。平面状に伸ばしたものを「金箔」(きんぱく)、糸状に伸ばしたものを「金糸」(きんし)と呼び、豪華な衣装を作るために、金糸は綿や絹など一般的な繊維素材と併用されます。
他の金属と溶け合いやすいため、混ぜて合金とすることが容易です。
また、金は熱伝導、電気伝導ともに優れた性質を持ち、空気では浸食されません。熱、湿気、酸素、その他ほとんどの化学的腐食に対して非常に強く、そのため貨幣の材料や装飾品として古くから用いられてきました。



金は多くの時代と地域で貴金属としての価値を認められ、化合物ではなく単体で産出されるため装飾品として人類に利用された最古の金属です。
銀や銅と共に貨幣用金属の一つであり、貨幣(金貨)として使用され、流通してきました。
金は有史以前から貴重な金属として知られ、貴金属の一種である金は、そのままの形で自然界に存在しているため、精錬が必要な鉄などよりも早く人類が発見することができました。
他の貴金属や隕鉄とともに人類最初期から利用された金属とされています。
金は紀元前3000年代に既に使われ始め、最古の金属貨幣は紀元前7〜6世紀にリディアでつくられたエレクトロン貨で、天然の金銀合金に動物や人物を打刻したものが発見されています。
金は中国で商時代に已に装飾品として使われ、春秋戦国時代には貨幣や象嵌材料として使用されました。
古代エジプトのヒエログリフでは、紀元前2600年頃から金についての記述が見られます。
日本も古くから金を産出しており、平安時代には中尊寺金色堂・東大寺盧舎那仏像などに奥州産の砂金が大量に使用され、平泉・金色堂はマルコ・ポーロが東方見聞録で紹介した、黄金の国ジパングのモデルになったともされています。



金は金属としては非常に軟らかい物質であり、通常は銅や銀、その他の金属と鍛錬されて用いられます。
金とその他の金属の合金は、その見栄えの良さや化学的特性を利用して指輪などの装飾品として、また美術工芸品や宗教用具等の材料として利用されてきました。
さらに貨幣、または貨幣的を代替する品物としても用いられています。

装飾用途としては、キャスト、プレスを用いた量産タイプの指輪やブローチ、手作りの一品ものなどジュエリーとしての用途が一般的です。
線状にした金は繊維状の刺繍に用いられ、展延性がよいため金箔として美術工芸品建造物にも用いられます。
また金箔を粉にしたものは味や栄養に影響しないが華やかに見えるという点から、飲料や料理の食材にあるいは酒に混ぜるなどして用いられます。この場合の金粉は銅抜きと呼ばれ割り金として銅は含まれていません。
食器類に用いる場合は、見栄えをよくするのみならず、食品に金属の味をつけない意味でも有用になることがあります。
このように金が装飾品として様々に利用されるのは、金は通常錆びることがなく、アレルギーの発現率が小さいことから、アクセサリーとして手入れしやすく安心して身につけられることが理由となっています。

金は工業用品としても利用されています。
耐食性、導電性、低い電気抵抗などの優れた特性を持ち、20世紀になってからは工業金属として様々な分野で使用されています。
近年では、廃棄された工業用品(おもに携帯電話などの電子基板)を溶解し、金、リチウムなどの貴金属や希少金属(レアメタル)を抽出する事業(いわゆる都市鉱山)も展開されています。




ダイヤモンドが地球上に誕生したのは、恐竜の出現よりさらに30億年ほどさかのぼる太古の時代です。
地底奥深くの岩石に含まれる炭素が数千度の高温と高圧によって偶然にも結晶化し、ある時火山の爆発によって地表近くに運ばれたのです。
そんな過酷な環境で生まれたダイヤモンドですが、様々な経緯を経て、現在では世界で最も硬く、世界で最も美しい宝石としての地位を確立しています。



ダイヤモンドという名前は、ギリシア語のadamas(征服できない、懐かない)に由来します。
ダイヤモンドは、炭素の同素体の1つであり、実験で確かめられている中では天然で最も硬い物質です。他の宝石や貴金属類と触れ合うような状態で持ち運んでいると、それらに傷をつけてしまう事があるので注意が必要です。
結晶構造は多くが8面体で、12面体や6面体もあり、宝石や研磨材として利用されています。
また、ダイヤモンドの結晶の原子には不対電子が存在しないため、電気を通しません。
地球内部の非常に高温高圧な環境で生成されるダイヤモンドは定まった形で産出されされませんが、カット後の菱形面が一般認識におけるダイヤモンドの形状で、このことから菱形、トランプの絵柄(スート)、野球の内野、記号(◇)を指してダイヤモンドと言うこともあります。
なお、ダイヤモンドは油になじみやすい性質があり、この性質を利用してダイヤモンド原石とそうでないものを分ける作業もあります。
ジュエリーとして身に着けているうちに皮脂などの汚れがつくと、油の膜によって光がダイヤモンド内部に入らなくなり輝きが鈍くなりますが、中性洗剤や洗顔料などで洗うと油が取れて輝きが戻ります。
逆に水には全くなじまず、はじいてしまいます。
ダイヤモンドが燃えることはありませんが、大規模な高温で熱し続けると、気化して消滅するという性質を持っています。



ダイヤモンドの産地として最も古いインドでは、紀元前800年頃から数世紀に渡って採掘されていました。
インドから古代ギリシャに渡ったダイヤモンドは、当時の技術では研磨も加工も難しく、結晶そのものの美しさから護符や魔除けに使われたり、工業製品として使用されるにとどまり、その価値は高くないものでした。
しかし15世紀頃、ベルギーで画期的な研磨方法が確立されると、次第に宝石としての価値を持つようになり、17世紀にブリリアントカットが開発されるとその地位は一気に向上しました。
こうしたダイヤモンドの流通に欠かせない地が、イスラエルでした。この地に住むユダヤ人は流浪の民でもあり、持ち運びの便利な軽くて価値の高い宝石を珍重しました。
彼らはダイヤモンドの価値にいち早く気づき、ダイヤモンドの流通に大きな役割を果たしていくのです。

そしてダイヤモンドは富や権威の象徴あるいは栄光の証として珍重されるようになり、特別なダイヤモンドには固有の名前がつけられるほどでした。

1905年に南アフリカのカリナン鉱山で発見された史上最大のダイヤモンド原石「カリナン」は、3106カラットあり、当時のイギリス国王エドワード7世に献上されました。
カリナンからは9つの大きな石と96個の小さな石が切り出されました。9つの石にはそれぞれカリナンIからIXの名が与えられ、すべてイギリス王室か王族個人が所有しており、いくつかはロンドン塔で永久展示されています。

また、現在世界最大の研磨済みダイヤモンドは、ザ・ゴールデン・ジュビリーで、この石は545.67カラットあり、タイ国王ラーマ9世の治世50周年を記念して1997年にタイ王室に献上されました。

他にも有名なダイヤモンドとして、グレート・ムガル、リージェント、フロレンティン、南の星、サンシー、ドレスデン・グリーン、コ・イ・ヌール、ホープなどなど。
特にホープ・ダイヤは所有者が次々に不慮の事故で死亡すると云う呪いの宝石の都市伝説で有名で、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

このように、ダイヤモンドには古くから様々な歴史があり、今日に至るまでその価値を保つ一因にもなっています。



ダイヤモンドの用途は、先にも触れた通り宝飾品そして工業用品です。
宝石を工業用品に? とお思いのことかもしれませんが、一口にダイヤモンドといっても「宝石になれるものとそうでないもの」が存在し、宝石になれなかったダイヤモンドはその硬度を活かし、電子材料、超硬合金、セラミック・アルミニウム系合金・ガラスなどの高硬度材料・難削材料の研削(ダイヤモンドカッター)・研磨(ダイヤやすり)をはじめとして、切削用バイト、木材加工などオールラウンドな加工を可能にしています。

宝飾品として利用する場合は、今まで目にしたことは一度や二度ではないはずで、リング・ネックレス・イヤリング・ブレスレットや、ドレスにダイヤモンドをあしらったものも存在します。
ダイヤモンドが装身具としてどのようなデザインの下に配置されているか、という違いでしかなく、これら宝飾品の価値はダイヤモンドそのものの価値と言っても過言ではありません。
ダイヤモンドの価値を決めるのは、4Cと呼ばれる基準で、米国宝石学会が制定し、ダイヤモンドを評価する国際基準として定着しています。
ダイヤモンドの「鑑定書」には、この4Cが記載されており、色(カラー color)、透明度(クラリティ clarity)、重さ(カラット carat)、研磨(カット cut)の4点から評価し、それぞれの頭文字から4Cと略しています。